ヴィア・フェラータ挑戦記

ヴィア・フェラータ・・・
「鉄の道」を意味する、山岳の難所にワイヤーなどを設置したコースの総称で
アルパインクライミングより難易度や危険度が易しいクライミングを楽しめます
そんなコースが近場の御在所岳にあるので、源流釣行のトレーニングに行きました
・・・山賊が挑む「御在所ヴィア・フェラータ」のドキュメンタリーです
※アルパインクライミング:岩壁などを登る、最もハードで難易度が高い登山




御在所岳・・・名古屋から近い鈴鹿山系に位置し、標高は1212mの信仰の山。
一般コース、バリエーションルート、バットレスなど初~上級者まで楽しめるうえに
ロープウェイを使えば運動靴で山頂に行くことができます
私も何度も楽しんだ親しみ深い山でもありますが、ヴィア・フェラータは初見・・・
地図に記載のないバリエーションルートになるようです
※バリエーションルート:一般登山道とは異なり、登攀や山行が困難なルート
  国土地理院地形図、登山地図などにルートの記載がない
※バットレス:山頂や稜線に突き出し切り立っている急峻な岩壁を意味する
  上級クライマー向けルート
  北岳バットレス クラシックルートなどが有名



まずはヴィア・フェラータを調べてみました・・・なるほど、延べ300mの壁か・・・
技術的に問題なく登攀を楽しめそうですが、ビレィ主体の登攀装備は必要
そして初心者には難易度が高く、恐怖感も伴うのではないかな?という印象
ヴィアまでのアプロ―チもルート記載がないのでルートミスしそう・・・
個人の登攀記録を元にルート策定し、現地ではGPSを活用することにします
※ビレィ:ビレィ(ロープを使ったクライマーの安全確保) セルフビレィ(自己確保)



さて、ここからはドキュメンタリー風味でご覧ください(笑)
前日に登山届提出~深夜に出発~登山口近くに車を停めて仮眠
5:30 寝坊です(笑) 車が揺れる強風に不安を抱きながら準備開始
ウェア、アプローチシューズ着用・・・登攀装備準備
まずはTecnicaのシューズで山行とヴィアの登攀テスト
後半はLA SPORTIVA ULTRA RAPTERⅡもテストしてみます
テン泊装備まで入れたザック重量は一般登山としてはヘビークラスの17㎏・・・
装備、レイヤリング、登攀技術、体力、ルート策定能力、エネルギーマネジメントなど
生きて帰るためのトレーニングと総合テストです
※レイヤリング:ウエアの構成




6:00 ヘルメット装着、GPS(YAMAP)起動、60Lザックを背負ってスタート
スタート時標高は約550m・・・御在所山頂(1200m)まで約700mのアタック開始
景色を楽しみ、登攀を楽しみながらのんびりと行きます



一般登山道からルートチェンジして藤内小屋を目指しますが
あえて厳しいマイナールートを歩きます
転倒、道迷い、滑落・・・危険回避しながら、体のナラシも行います
マイナーなだけにぼっち登山・・・何かあっても助けは望めません・・・

  



8:00一般登山道に合流して藤内小屋に到着
小休止、水確保、電波OK、GPS OK ザックリセッティング
一般登山の皆様が「頑張ってください」と声をかけてくださいます
あざ~す、頑張ります

  



10:30一般登山道からバリエーションルートに入りヴィアを目指しますが
危険なコースのため、ヴィアまでのルートもわからないようになっており
GPSを頼りに、微かな踏み跡を辿って2時間かかりました・・・うむ
途中でお会いしたエキスパートによれば
単独の初見でここまで来れる人はまずいないそうで、驚いていました
源流アプローチに比べれば楽な方なのですが・・・




11:00防寒シャツを仕舞い、登攀装備装着、行動食でエネルギー補給、グラブ装着
11:30 トライ開始
ここから今日の核心部・・・垂直に近い岩壁を300mの直登です
UL装備の速いクライマーに先に行ってもらいます
※UL装備:ウルトラライトの略、超軽量にした装備



納まっていた風が強くなり、強風→突風に・・・吹き飛ばされそうになります



突風に備えてビレィを掛けて小休止・・・
ワンミスで命を落とす高さなので、慣れない人は恐怖を感じると思いますが
源流釣行の登攀ではよくある光景なので、おバカな私は平気です(笑)
上を見ると、もう少し難易度が上がるようです・・・うむ、よろしい



垂直に近いルンゼ状の下降ポイントに到達・・・
あまりにも風が強くて危険なので、久し振りに懸垂下降します
※ルンゼ:急峻な岩稜の縦の溝、割れ目



セルフビレィ、ザイルセット、回収テスト、エイト環接続、下降ルート確認
セルフビレィ解除、下降開始・・・
突風で何度もブランコしましたが、目測15mを下降してザイル回収・・・うむ、よろしい
ほっと一息つきながら周囲を見回して爆笑・・・
ザイルを使わずに降りられるエスケープルートがありました(笑)
※エイト環:ザイルに巻きつけてつかう、8の字(エイト)形状の下降用具
※エスケープルート:危険箇所を回避するための道



さて、ナイフリッジにアプローチ・・・ダブルビレィで慎重に・・・
背中のザックの重みで重心が上がって不安定なのに加え
風を受ける面積が大きいので何度も飛びそうになります
体が引き剝がされたら間違いなく死にます
岩にとりついて強風に耐えながら匍匐前進・・・10mの距離に30分かかりました
※ナイフリッジ:左右がナイフの刃のように切れ落ちた尾根、岩稜

  



最後まで強風、突風との戦いでした
トウフ岩は、岩角に風がぶつかって弱まるところを探りながらクリア
ここから道のない急角度の崖を直登して一般登山道に合流・・・
GPSとビレィが命綱です



15:30・・・
ヴィアのアタック開始から4時間かかって合流・・・ここも立っているのがやっと・・・
夕暮れが迫ってきたし、ヴィアは登れたので、登頂は諦めて下山します



少し下ると風裏になったので、遅いお昼と大休憩・・・
気温5~6℃の強風を浴び続けて凍えた体を温めます
スマホの充電量が35%まで低下したので、モバイルを繋いでおきます
頂上から下ってきた登山客に聞くと、頂上もヤバい状態だったようです



16:00 シューズをULTRA RAPTERⅡにチェンジして下山開始
キレットも吹き飛ばされそうな強風で苦戦・・・登攀装備を外さなくてよかった・・・
※キレット:落差が大きく、鋭く切れ込んだ急峻な岩盤状のコル(鞍部)

  



風裏で撮影・・・山、街、海・・・頂上から見たかったなぁ・・・



17:30 スタート地点に到着
11時間に及ぶヴィア・フェラータの挑戦は無事に終了しました
生きて帰るためのトレーニングも、総合テストも、及第点です



いろいろあった御在所ヴィア・フェラータ・・・
強風のために山頂は諦めましたが、登攀の難易度が上がって
大変良いトレーニングになりました
何より収穫だったのは、エネルギーマネジメントがうまくできたことで
身体トラブルはなく、極限状態でも落ち着いて行動できたことでした
そしてザック、シューズ、レイヤリングなど装備セッティングが上手にでき
疲れを残さずに帰れたこと・・・
今年のアルプス釣行が楽しみです

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