聖地巡礼 黒部の山賊になる 3日目

3日目(8月18日)
快晴・・・ヒュッテのご主人に入渓点を教えていただき
夢の黒部川源流域に立つことができました・・・
ここまで軽く20年以上・・・長かった
息子よ、素晴らしい釣りをしよう・・・空からの応援頼むぞ・・・



今回のタックルです
K.Bullet Classic 11ft #3〜4に シューティングスペイライン#4フローティング の組合せ
古めかしいデザインながら 源流から湖まで
20cmの豆イワナから 60cmオーバーのモンスタートラウトまで楽しめるスペックです
食料、救急セット、レインウェアなどはアタックザックに入っています




足回りはウエットウェーディングを装備して挑みました
ゲーター、シューズともmont-bellの沢登り用です
LEKIのポールは折り畳んで腰に付け、 激流の渡渉時に使います
単独なのでザイル渡渉はやらず 膝上あたりまでの水深を渡渉点として
LEKIをフルに使いましたが それでも結構きついです
ヘルメットは常時着用です




シューティングヘッドが彼方にブッ飛んでいくロングキャスティング
そして水面が炸裂・・・
絵に描いたようなフライフィッシング・・・夢の始まりです




大型のスティミュレーター(バッタサイズの毛鉤)にジャンプして襲いかかり
ヒットすると高々とジャンプしたり 激流に乗って走ったり
… ここには強いニジマスが棲んでいます
魚が強く、流れがきついので ティペット(先糸)は4X(1号)のショックリーダーにしています



40cmを超えるとパワーが素晴らしく
追いかけて走ったり、ジャンプに耐えたり… まるで海外のフライフィッシングです
ランディングネットに入らないので浅瀬で撮影
釣れた時は猛獣のような抵抗で楽しませてくれて
ランディングすると大人しくポーズを決めてくれる心ニクい演出の鱒たちです
えぇと・・・私は「鱒」であればなんでもウェルカムの「雑食な山賊」です(笑)



黒部川は規模が大きいうえに水量が多く、急勾配なので激流・・・
釣りも遡行も技量を試されます
流れの音は「ザァ~」ではなく「ドォォォ~」と太いです
「黒部で流されると死ぬ」 とは聞いてましたが 流れを目の当たりにして納得しました
黒部へ釣りに行かれる方は
しっかりとした装備と充分なトレーニングを積んで挑んで頂きたい と思います




要所要所で小さくとも30cmを超えるニジマスを連発・・・
どれも猛獣なので一匹一匹を大事に、持てる技量を出し切って応戦・・・
ランディングして、楽しませてくれた鱒を称え、息子に見せ、優しくリリース・・・
夢は儚く短いもの・・・と思っていましたが、黒部の夢は延々と続きます・・・
映画のような素晴らしいロケーションにただ一人・・・
そして映画のようなフライフィッシング・・・
本当にここは日本なのだろうか・・・?
雨、雪代、増水、強風・・・など良い釣りができるチャンスは数えるほどしかない
と言われる黒部で
素晴らしいコンディションを与えてくれた山の神に深謝しながら釣りを楽しみます



また素晴らしいポイントに着きました・・・鱒がライズを繰り返しています
いつもならチャンスを逃すまい、とすぐさまロッドを振りますが
ここでガツガツするのは勿体ない・・・と思ってお昼にしました
赤牛岳か水晶岳か?3000m級の稜線が意外と間近に見えます
頭上にタカ?ワシ?が舞い、急斜面を登るカモシカが見えます
河原に目を落とすと、時々カワウソのようなやつが顔を出します
頭、足、ロッドにトンボが留まり、バッタが所かまわず飛び交っています
目の前のポイントで鱒がライズを繰り返しています・・・
なんという眺めでしょう??・・・これを見るだけでも来る価値があります



非日常の世界でお弁当をモグモグ・・・どんな高級料理よりも美味い!
かつての山賊もこんな素晴らしい黒部を楽しんでいたのでしょう・・・
競争社会で37年間戦ってきて間もなく定年・・・けっこう疲れた・・・
そして老後はどうやって生きていこうか?などと悩んでいたところに
息子の死が追い打ちをかけるように、生きる力が失われていた私ですが
「焦らなくていい、頑張らなくてもいい、鷹揚に生きていこう」
と思い直し、ロッドを握って立ち上がることができました
苦労してここまで来た甲斐があった・・・黒部に感謝です




満ち足りた気持ちでフライをシュートすると、ヒット!





私の気持ちを察してくれたのか、立て続けにイワナが顔を出してくれました
30cmに満たないのですが実に強く逞しい・・・イワナ達に励まされているようです




徐々にイワナの勢力が増して、最後のポイントへ・・・
この先は、多くの遡行エキスパートの命を奪ってきた神の領域・・・上の廊下
別名「神の廊下」です・・・
丸太のようなイワナが棲んでいるのはわかっていますが
単独遡行は間違いなく神に命を捧げることになるので
その領域の入口を守るイワナの姿を見て納竿としました
上の廊下に一礼、そしてイワナ達に一礼・・・渾身のフルキャスティング・・・




ニジマスかと思うような猛烈なアタックと強い引きに必死に、感謝を込めて応戦・・・
9寸イワナ、続いて尺イワナが出てくれました・・・
美しい、そしてなんと逞しいのだろう・・・
夢の舞台は、夢に描いた釣りで締めくくることができました





渓の神に、山の神に一礼してヒュッテへ帰還・・・ご主人が出迎えてくれました
「どうでしたか?」
「ありがとうございます、たいへんいい釣りができました」
「夕食の用意ができましたので、今夜も宴をやりましょう」
登山の皆さんと飲んで、食べて、歌を歌い、山の報告、釣りの報告・・・
一期一会の旅は素晴らしい「おもひで」を残してくれました・・・

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