遭難ってするんですか?

久し振りに投稿します


ある日、親しい海釣り師(A君とします)が
「山賊さん、オレも源流で釣りをしたいんですが」との相談がありました
勿論私は賛成・・・しかし、A君は山の釣りや登山を知らないので
「ところで、源流釣りで遭難ってホントにするんですか?」と質問が・・・
「するよ~だから遭難と対策を知ってもらって準備やトレーニングを応援したいんだよ」
と答えました

 




よくよく話を聞くとyoutubeを見て源流に行きたくなったらしいのですが
その多くは楽しさを演出するあまり、大事なことは伝わらない編集が多いのです
一枚目は道のない推定斜度45度以上の土の崖をノーヘルの釣り装備のまま
滑り落ちながら登る様子(登山装備、登攀装備は全くなく、技術もない様子)



次はこれ
サンダルで長い急な下り道と崖をアプローチして、そのまま釣りをしています
もちろん安全装備もナシ・・・これらに対して批判するつもりはありませんが
視聴者に与える影響を考慮した撮影や編集をしてほしいものです
そして釣り人は遭難対策が手薄な傾向であることがよくわかります
以前に私の遭難対策の話をしたことがあるので
動画を見たA君は疑問を持っていたそうです




A君に遭難対策の必要性や重要性をわかってもらおうと
2人で遭難の実態を調べたり、情報を調べながら話し合ってみました・・・
まずは今年の4月の山梨県の遭難情報です・・・4/25に渓流釣りで・・・



残念なことに渓流釣り師の滑落死がありました
「尾根を下っていた・・・」とあるので恐らく源流釣りでしょう
遭難対策をしていたのかはわかりませんが・・・




続いて渓流釣りに的を絞って昨年の記録を調べてみると・・・
釣り期間は半年ほどなのに、こんなにありました
滑落が一番多く、次に道迷い・・・年齢も様々・・・コレ、山梨県の半年分です
つまり、源流釣りも登山と同様に遭難する可能性があるのですが
登山以上に過酷だったり、危険なルートを歩くことが多いので
登山以上に遭難対策が必要であることを認識すべき・・・
という私の意見にA君も納得してくれました



じゃあ、何から対策していけばいいの?とA君・・・
そこでデータ豊富な長野県の山岳遭難の記録を調べてみます
長野は登山、渓流釣り、沢登りなどのカテゴリー分けはされていませんが
昨年は284件の遭難件数と310人の遭難者数です

  



内容別に見てみると
転落滑落→転倒→道迷い→疲労凍死傷→その他・・・の順に多いことがわかります
凍死は体温が下がって死に至るものなので、夏でも起こります
「その他」には「装備不足」「技量不足」を含む・・・とありますが
ここでもう少し考えてみると、上位の内容は「現象」を表しており
真の原因は「装備不足」「技量不足」ではないかな??と話し合ってみました
つまり、きちんと装備できて、体力、集中力、判断力などを含む技量を身に着ければ
遭難の多くは回避できるのではないかな?という考えにも納得してくれました



さらに調べて話し合ってみます
単独、2人の遭難発生件数が多いけど、2人の方が死者が少ない
そしてパーティー人数が多い方が遭難が発生しにくいので
初心者のA君は経験者と同行してリスク低く、技術や知識を学んでほしい
という意見も大いに納得してくれました
・・・A君にとって一番身近な経験者は私になります



まだ若く、小さなお子さんもいるA君はお小遣いが少ないので
最低限準備すべき装備について話し合います
まずは登山用ヘルメットです・・・命を守る最も大事な安全装備であり
藪漕ぎの時や、遡行中の転倒などの時も無用なケガから守ってくれます
今時は軽量かつデザインも優れているので
テン場でさえ私は帽子感覚で被っています



アルプスの冬の遭難例・・・なんと運動靴にジーンズ!
凍傷になっているかもしれないけど、滑落や凍死せずよく生きてたな~
つまり靴と服装、レインウェア含む雨装備もたいへん重要です

          




ヘルメット、靴、服装、レインウェア含む雨装備・・・
服装は下着から防寒ジャケットまで多岐に渡ります
これだけでも、A君にはかなりの出費になるので
その他の装備は私のものを共有して技術や知識、経験を積みながら
要るものを買い増ししながら、レベルアップしていこう・・・ということになりました

     



そのレベルアップですが、登山情報にこんなものがあります
「グレーディング」というものです



縦軸が体力度、横軸が登山道のレベルとそれに見合う技術力です
これで自分は今どのレベルにあるのか?がわかる・・・
つまり「身の程を知る」ことができるので
どのくらいの難易度の山まで行けるのか?何をやってはダメなのか?
次に学ぶものは何か?そのためにどんな装備やトレーニングが必要か?
などがわかると思うのです



さらに対策が要ります
登山ルートも、キャンプ場も、水も、食糧も、携帯の電波もない・・・
電波がないので常に観天望気しなければならない・・・
そんな過酷な大自然で生き、生還するためのサバイバルテクニックを習得し
過酷な大自然を楽しめる太いハートになってもらうことも大切
これが私の考える「登山以上の遭難対策」になります
※観天望気:空模様、動物の動向など自然現象を観察し、天候を予測すること

    



ここまで述べたことは、経験に基づく私の考えでもあるのですが
あの「日本一の山のプロ」島崎三歩君もそう言っているので
間違いはないと思います
今は長野県山岳総合センターの特任講師に出世しているんですね(笑)
対策内容は多岐に渡るため、A君と行ったものを都度紹介させていただきます
ということで登山の方も、源流釣りの方も、どうか慎重に!そしてご安全に!

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